乳児痔瘻とは?

生後1か月を過ぎたあたりから、1歳前の乳児の肛門のまわりに、膿(うみ)がたまることがあります。これを肛門周囲膿瘍といいます。肛門周囲膿瘍が治りきらずに再発を繰り返していると直腸と皮膚の間に穴ができます。

主な原因は?

はっきりとわかっていませんが、乳児期の不完全な免疫力、おむつかぶれ、下痢がよくないという説があります。

なりやすい人は?

下痢が続く乳児

症状

  • 発熱、肛門痛、肛門のまわりに開いた穴から膿が出ます。
  • 肛門のまわりが腫れます。
  • 機嫌が悪くなります。
  • 多くの場合、1歳をすぎると自然に治り、再発しなくなります。
  • 1歳をすぎても再発を繰り返し、痔ろうが残る場合は手術が必要となります。

発生部位

肛門の左右側方

好発年齢

1歳~3歳。男児に多いですが、理由は、はっきりしていません。

病気に気づいたら

専門医の診察を受けてください。

診断方法

視診・触診・肛門鏡を用いた肛門診で診断します。

治療法

まず、局所を清潔にし、早めの段階では、抗生物質を使用し、それでも化膿するようならば切開排膿を行います。どうしても治らなければ、手術を行います。

手術

全身麻酔下において、ろう管の切開または切除術

合併症について

出血や傷が化膿したり、腫れることがあります。状態により処置を行います。

退院後の日常生活

おしりの洗浄をしましょう。
便秘・下痢に注意しましょう

退院後の通院について

退院時に主治医にご確認ください。

薬について

肛門部の血行をよくして、出血、痛み、腫れなどの症状を改善する目的で軟膏を使います。

予防法

便通のコントロールをしましょう。
また、乳児の痔瘻は、よくおむつかぶれと間違えやすいので、上記に示した症状が出現した場合は、早めに受診してください。

よくいただくご質問

くるめ病院にお寄せいただいた、乳児痔瘻に関するご質問にお答えしています。
その他のご質問やご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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乳児痔瘻の赤ちゃんは、どんな表情やしぐさをしますか?


乳児痔瘻の赤ちゃんは、痛みや不快感を感じるため、以下のような表情や行動を見せることがあります。

泣く
特に排便時やおむつ替えの際に痛みを感じるため、激しく泣くことがあります。
不機嫌になる
常に不機嫌になり、落ち着かない様子を見せることが多くなります。
表情が歪む
痛みを感じるときに、顔をしかめたり、表情が歪むことがあります。
食欲が低下する
痛みや不快感から食欲が低下することがあります。
眠りが浅くなる
痛みのために眠りが浅くなり、夜泣きが増えることがあります。

赤ちゃんは言葉で、痛みや不快感を表現できないため、これらの行動や表情に注意を払い、異常を感じた場合は早めに受診しましょう。


乳児痔瘻とおむつかぶれは、どう違いますか?


まず、おむつかぶれは、肛門周囲の皮膚が赤くなり、かゆみや痛みを伴う皮膚の炎症です。一方、乳児痔瘻は、皮膚の下にトンネル状の瘻管(トンネル状の穴)が形成される状態です。

下痢やおむつかぶれなどで、肛門の周囲に細菌感染が生じることがあります。この炎症が進行すると、「膿瘍(のうよう:膿のかたまり)」ができ、肛門周囲が赤く腫れる状態になります。これが肛門周囲膿瘍と呼ばれます。その後、炎症が皮下に広がり、直腸から肛門周辺の皮膚へ瘻管(トンネル状の穴)ができると、乳児痔瘻となります。

肛門周囲膿瘍は、おむつかぶれで悪化するため、おしりを清潔に保つことが重要です。排便後はぬるま湯でおしりを丁寧に洗ってください。
一度治まっても再発することがありますので、痛みや腫れが強い場合は専門医を受診したほうが良いでしょう。


乳児痔瘻は、放置しても良い病気ですか?


乳児痔瘻は、多くの場合、自然治癒することが多いとされる病気ですが、放置すると以下のようなリスクがあります。

症状の悪化や長期化
放置することで炎症が進み、痛みが強くなったり、膿の量が増えたりすることがあります。また、治癒にも時間がかかる可能性があります。
再発
一度治っても、再発する可能性があります。特に、1歳を過ぎても症状が改善しない場合は、再発のリスクが高くなります。
合併症
肛門周囲のさまざまな疾患や敗血症などの合併症を引き起こすことがあります。

乳児痔瘻は、決して怖い病気ではありませんが、放置するとリスクがあります。
気になることがあれば、早めに医療機関を受診し、治療を行うことが大切です。


乳児痔瘻は、赤ちゃんの食事と関係がありますか?


赤ちゃんの食事が乳児痔瘻の発症に、間接的ですが影響を与えることがあります。特に、食べ物が下痢や便秘を引き起こす場合、肛門周囲に炎症が起こりやすくなります。例えば、ミルクや離乳食の与えすぎ、脂っこい食事、アレルギーのある食材を与えることなどです。

赤ちゃんの食事には、栄養バランスを考慮し、消化が良い食品やアレルギーを起こしにくい食材を選ぶことが大切です。また、定期的な食事管理と規則正しい授乳を行うことで、便秘や下痢のリスクを減らし、乳児痔瘻の発症を予防することができるでしょう。


乳児痔瘻で、手術が必要になることはありますか?


乳児痔瘻は、ほとんどが自然に治癒しますが、まれに1歳を超えても治らない場合があります。状況によっては手術が必要となる場合もあります。

繰り返す膿瘍や感染
治療しても再発を繰り返す場合。
自然治癒しない
一定期間観察しても自然に治らない場合。
重度の症状
膿瘍が大きい、もしくは症状が重い場合。

症状や状況に応じて、手術以外の治療法も検討されることがあります。医師の診察を受け、適切な治療方法を選択することが大切です。


乳児痔瘻の予防法はありますか?


乳児痔瘻を予防するためには、以下のような方法が有効です。

栄養バランスの良い食事管理
乳児の発育に必要な栄養素をバランス良く摂取することが重要です。消化に良い食品やアレルギーを起こしにくい食材を選びましょう。
規則正しい授乳
母乳やミルクの摂取を規則正しく行うことで、消化器の働きを安定させ、便秘や下痢を予防することが期待できます。
適切な水分摂取
適切な水分摂取を行うことで、便秘を予防し、肛門周囲の炎症を防ぎます。
おむつを清潔に保つ
おむつ交換をこまめに行い、おしりを清潔に保つことが肛門周囲の感染を防ぐために重要です。
適切なおむつを選ぶ
通気性の良い素材や適切なサイズのおむつを選ぶことで、肌の蒸れを防ぎ、おむつかぶれのリスクを軽減します。

これらの予防策を実践することで、乳児痔瘻の発症リスクを減らすことができます。